個人店の集客予算はいくらが妥当か。相場を探すより、自店の数字から逆算する
「販促費は売上の何%」という一律の目安は、探しても手に入りません。1件あたりの粗利から上限を出す方法、固定費と変動費の分け方、予算をつける前に埋めておく無料の項目を整理しました。
「集客にいくらかければいいですか」
よく聞かれますが、答えになる一律の数字はありません。先に、その理由から書きます。
「販促費は売上の何%」は、公的な数字としては出てこない
小規模な店の経営指標としてよく参照されるのが、日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」です。決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を集計したもので、業種ごとに隔年で実施されています。2025年度調査では情報通信業、運輸業、卸売・小売業、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業、サービス業が対象で、2026年8月に公表されました。
ただし、利用の手引きを確認した限り、広告宣伝費や販促費にあたる指標は掲載されていません。原価率や人件費率は業種別に出ていますが、集客に使う費用の水準は、この調査からは分かりません(原価率のほうは飲食店の原価率の目安は業態で違うに整理しています)。
もう一点、数字の読み方の注意が同じ手引きに書かれています。掲載されているのは平均値と中央値の両方で、サンプルの中に著しく大きい値が含まれる場合、単純平均はぶれやすくなると説明されています。仮に販促費の「相場」をどこかで見かけても、それが平均値なら、規模の大きい数社に引っ張られている可能性があります。
なお、この調査の対象は同公庫の融資先の法人企業で、従業者数50人未満です。個人事業は含まれません。自店に当てはめるときは、この条件も見ておいてください。
結論として、外から借りてくる数字はありません。自店の数字から出すしかない、というのが出発点です。
上限は「1件あたりの粗利 × ほしい件数」で決まる
逆算はこの順です。
1. 1件あたりの粗利を出す。客単価ではありません。原価と、その1件のために増える人件費を引いた残りです。飲食なら1回の来店、サロンなら1回の施術で構いません。
2. 何回来てもらえるかを掛ける。新規客が平均して何回来ているかが分かるなら、それを掛けます。分からないなら1回分だけで計算してください。少なく見積もっておくほうが安全です。
3. これが「1件にかけられる上限」です。
Google広告のヘルプでは、コンバージョン単価(費用÷コンバージョン)を1回のコンバージョン獲得にかかった費用の平均と定義しています。この数字が上限を超えたら、その施策は続けられません。判断の詳しい手順は店舗の広告を止めるか続けるかに書きました。
4. 月にほしい新規件数を掛ける。ここで月の上限額が出ます。
たとえば1件あたりの粗利が2,000円で、月に30件ほしいなら、月6万円が理論上の上限です。実際にはここから利益を残すので、使うのはその一部になります。半分に置くのか、立ち上げ期だけ8割まで許容するのか。そこは経営判断です。
大事なのは、「月5万円くらいかな」と先に決めないことです。金額から入ると、それが高いのか安いのか永遠に分かりません。
固定費と変動費を分ける
同じ「集客予算」でも、性質が違うものが混ざっています。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一時費用 | ホームページ制作、撮影 | 最初にまとまって出る。数年使う |
| 固定費(月額) | MEO運用、予約システム、サーバー | 成果に関係なく毎月出る |
| 変動費 | 広告 | 止められる。翌月ゼロにできる |
先に手を出すべきは変動費です。効かなければ止められるからです。逆に固定費は、契約した時点で来年の予算も決まります。
月額の契約を検討するときは、何をいくらでやってもらうのかを分解してから判断してください。内訳の読み方はMEO対策の費用相場に、制作費のほうは店舗ホームページの制作費用は何で決まるかにまとめています。
予算をつける前に、0円の項目を埋める
ここが実務では一番効きます。Googleがローカル検索の掲載順位を上げる方法として挙げているのは、次の項目です。
- ビジネスのオーナー確認を行う
- ビジネス情報を最新の状態に保つ(住所、営業時間、業種、属性など)
- クチコミに返信する
- 写真や動画を追加する
- 店舗の商品を追加する(対象業種のみ)
どれも費用はかかりません。そして同じページには、ビジネス情報が正確でない場合、関連性の高い語句で検索されても表示されない場合があると書かれています。
ここが空のまま広告に払うと、払って連れてきた人が、整っていないプロフィールやサイトを見て帰ります。穴の空いたバケツに水を足す形になります。順番としては、無料の項目を埋め切ってから、残った不足に予算をつけるほうが効率がよいです。
決めたあとに見る数字
予算は置いて終わりではありません。月次で見るのは2つだけで足ります。
- 1件あたりいくらで取れたか(使った額 ÷ 取れた件数)
- それが1件あたりの粗利を超えていないか
超えていれば止めるか、受け皿を直します。下回っていて件数も足りているなら、増やす余地があります。
なお件数を数えるには、何を1件と数えるかを先に決めておく必要があります。店舗の場合、電話と来店がサイトの外で起きるので、フォーム送信だけを数えると過小評価になります。この点も店舗の広告を止めるか続けるかで扱いました。
まとめ
- 「販促費は売上の何%」にあたる指標は、小企業の経営指標調査には掲載されていない
- 見かけた相場が平均値なら、大きい値に引っ張られている可能性がある
- 上限は「1件あたりの粗利 × 来店回数 × ほしい件数」で出す
- 来店回数が分からないなら1回で計算する。少なく見積もる
- 金額を先に決めない。高いか安いかを判断できなくなる
- 一時費用・固定費・変動費を分ける。先に触るのは止められる変動費
- 予算をつける前に、費用のかからない項目を埋め切る
- 月次で見るのは「1件あたりいくらか」と「粗利を超えていないか」の2つ
来店前の接点が整っているかを外から確認したい方は、無料のMEO診断をご利用ください。店名とGoogleビジネスプロフィールのURLだけで送れます。
参照した一次情報
本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。