飲食店の原価率の目安は業態で違う。公的データで見るFL比率の考え方
原価率3割という言い方が独り歩きしていますが、業態で10ポイント以上ちがいます。日本政策金融公庫の経営指標から業態別の水準を出し、人件費と合わせた見方を整理しました。
「原価率は3割に抑えなさい」
飲食店の経営でよく聞く言い方です。ただ、これを全業態に当てはめると判断を誤ります。実際の水準は業態で10ポイント以上ちがいます。
ここでは日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(2025年度調査、2026年8月公表)から業態別の数字を出し、原価率をどう読むかを整理します。
数字の出し方を先に断っておきます。この調査が公表しているのは売上高総利益率(粗利率)です。原価率はそこから100を引いて算出しました。FL比率は、算出した原価率に公表されている人件費対売上高比率を足したものです。いずれも平均値で、自店の目標値ではありません。
業態別に見ると、こうなる
| 業態 | 原価率 | 人件費率 | 合計(FL比率) |
|---|---|---|---|
| すし店 | 41.1% | 30.2% | 71.3% |
| 日本料理店 | 38.0% | 31.5% | 69.5% |
| 食堂・レストラン | 35.2% | 33.0% | 68.2% |
| 一般飲食店 | 35.0% | 32.9% | 67.9% |
| 中華料理店 | 35.0% | 33.6% | 68.6% |
| 西洋料理店 | 34.0% | 32.2% | 66.2% |
| 酒場・ビヤホール | 32.2% | 32.2% | 64.4% |
| そば・うどん店 | 30.6% | 38.2% | 68.8% |
| 喫茶店 | 28.1% | 29.8% | 57.9% |
| スナック | 17.5% | 34.7% | 52.2% |
すし店と喫茶店で13ポイント、スナックとの差は23ポイントあります。「3割」はどの業態の話なのか、という問題です。
原価率だけを見ても判断できない
表の右端を見てください。原価率が低い業態ほど人件費率が高い傾向が読み取れます。
分かりやすいのがそば・うどん店です。原価率は30.6%と低いのに、人件費率は38.2%と全業態でもっとも高く、合計では68.8%になります。すし店(71.3%)とほとんど変わりません。
理由は想像がつきます。原価の安い素材を、手間をかけて商品にしている。材料費で浮いた分を人件費で払っている構造です。
逆にすし店は原価率41.1%と高いものの、人件費率は30.2%と低い。素材そのものが商品価値になる業態です。
つまり原価率を下げること自体は目的になりません。仕入れを削って手間が増えれば、合計は変わらないか悪化します。見るべきは原価と人件費の合計です。
自店の数字を出す
比べるには自店の値が要ります。決算書(損益計算書)があれば、計算は2行で済みます。
- 原価率 = 売上原価 ÷ 売上高
- 人件費率 = 人件費 ÷ 売上高
人件費に何を含めるかで数字が変わるので、役員報酬を入れるかどうかは決めて固定してください。入れたり入れなかったりすると、前年と比較できなくなります。上の表の調査では人件費対売上高比率として集計されているので、比較する際は自店側も同じ範囲で揃えるのが筋です。
月次で出すなら、棚卸をしていない月は仕入額で代用しても傾向は見えます。厳密さより、毎月同じやり方で出し続けることのほうが役に立ちます。
下げ方の優先順位
合計で見ると決まったら、順番はこうなります。
1. まず、どちらが業態平均から外れているかを見る。原価率が平均より5ポイント高いのか、人件費率が高いのか。両方平均並みなら、コストではなく売上側(客数・客単価)の問題です。
2. 原価が高いなら、メニュー単位で見る。全体の原価率は結果でしかありません。原価率の高い商品が多く出ているのか、廃棄が出ているのか、仕入れ単価が上がったのか。この3つは打ち手が違います。
3. 人件費が高いなら、時間帯で見る。人が余っている時間帯があるはずです。ここはシフトの設計の話で、時給の話ではありません。
4. 値上げは最後に検討する。ただし原材料が上がっている局面では必要な判断です。実施したら客数を必ず観測してください。値上げと単価アップの違いは客単価を上げるとは値上げのことかに書いています。
この数字の読み方の注意
3点あります。
平均値です。中央値ではありません。極端な数字を持つ店に引っ張られている可能性があります。
小企業が対象の調査です。チェーン展開している企業とは条件が違います。個人店・小規模店の参考値として見てください。
自店の目標値ではありません。立地・客単価・提供方法によって適正値は変わります。原価率45%でも回っている店はありますし、25%でも赤字の店はあります。平均は「自店がどちら側に外れているか」を知るための物差しとして使ってください。
なお、この調査は隔年で実施されており、次回の公表は2028年8月の予定とされています。それまでは今回の数字が最新です。
まとめ
- 原価率の水準は業態で10ポイント以上ちがう。「3割」は一律の基準ではない
- すし店41.1%、日本料理店38.0%、喫茶店28.1%、スナック17.5%(平均値)
- 原価率が低い業態ほど人件費率が高い。そば・うどん店は人件費率38.2%
- 見るべきは原価と人件費の合計。片方だけ下げても合計は動かないことがある
- 順番は、平均からの外れ方を見る → メニュー単位/時間帯で見る → 値上げは最後
- 平均値であり、自店の目標値ではない
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参照した一次情報
本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。