店舗経営

店舗の人手不足。求人を出す前に、1人増えると増える事務を数える

令和8年8月の有効求人倍率は、職業計1.06倍に対し生活衛生サービス3.13倍、接客・給仕2.31倍。募集を出せば来る職種ではありません。一方で雇えば決まった事務が発生します。厚生労働省の統計とリーフレットから整理しました。

人が足りない。だから求人を出す。この順番は自然ですが、出す前に見ておくと判断が変わる数字があります。

1つは、募集してどのくらい来るのか。もう1つは、1人雇うと何が増えるのか。 どちらも公的な資料で確認できます。

店舗の現場職は、募集を出せば来る職種ではない

厚生労働省の「一般職業紹介状況」が毎月出ています。令和8年8月分(令和8年10月2日公表)の全体値は、有効求人倍率1.18倍、新規求人倍率2.06倍(いずれも季節調整値)でした。

問題はこの全体値ではなく、職業ごとの差です。参考統計表の職業別(常用、パート含む、実数)を見ると、こうなっています。

職業分類 新規求人倍率 有効求人倍率
職業計 1.98 1.06
介護サービス職業従事者 6.83 3.89
生活衛生サービス職業従事者 5.04 3.13
接客・給仕職業従事者 3.84 2.31
飲食物調理従事者 3.47 2.21
一般事務従事者 0.64 0.29

有効求人倍率は、求職者1人あたりの求人数です。1を超えていれば、求人のほうが多い状態です。

生活衛生サービス(理容・美容などが入る分類)は3.13倍。 求職者1人に対して、3件分の募集が待っています。接客・給仕は2.31倍、飲食物調理は2.21倍。

対して一般事務は0.29倍です。同じ求人広告費をかけても、職種によって結果がまったく違う。 店舗の現場職は、応募が来にくい側に分類されています。

これを「自店の求人票が悪いから来ない」と読むと、文面を何度書き直しても終わりません。市場の側の条件です。

1人増やすと、決まった事務が増える

採用が難しいだけではありません。雇えば、法令で決まっている作業が発生します。店舗だと見落とされやすい3つを挙げます。

労働条件の明示事項が、2024年4月に増えた

契約を結ぶとき・更新するときに明示する項目が追加されました。リーフレットの記載はこうです。

全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。

「変更の範囲」は、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲と注記されています。2店舗目を出す可能性があるなら、ここをどう書くかが先に問題になります。

有期契約だと、さらに3つ増えます。

追加項目 内容
更新上限 通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容
無期転換申込機会 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに明示
無期転換後の労働条件 同じタイミングごとに明示

更新上限については、

最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になります。

とされています。あとから上限を付けるには、説明が先に要ります。

年5日の有給休暇は、店が時季を指定する義務

2019年4月からの義務です。

全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

対象は年10日以上付与される労働者で、管理監督者も有期雇用労働者も含まれます。 週の所定日数が少ないパートは付与日数が10日に届かないことがありますが、勤務が長くなれば届きます。

「本人が取らないから」で済まないところが要点です。労働者が自分で5日以上取っていれば時季指定は不要ですが、3日しか取っていなければ、残り2日は店が指定して取らせることになります。

管理簿と就業規則

事務が2つ付いてきます。

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

労働者ごとです。 人数が増えれば、そのまま冊数が増えます。

就業規則にも記載が要ります。

時季指定をする場合には、就業規則に以下2点の記載が必要です。

時季指定の対象となる労働者の範囲と、時季指定の方法等の2点です。リーフレットには「就業規則を作成・変更したら労働基準監督署への届け出をお忘れなく」とも書かれています。

1人目を雇う日ではなく、雇うと決めた時点で手をつける作業です。

だから先に、減らす側を見る

ここまでで確認できたのは2つです。採用は市場の条件として難しい。雇えば事務が増える。

この2つを踏まえると、求人を出す前に「減らせないか」を一度通したほうが、結果として早いという判断になります。減らす対象は3つに分けて考えると決めやすくなります。

区分 扱い
法令で義務づけられている事務 減らせない。やり方を軽くするだけ
店が自分で増やした仕事 見直せる。やめても誰も困らないものがある
客が自分でできる仕事 渡せる。電話応対がいちばん大きい

3番目から手を付けるのが早いです。電話で予約を受けている店は、電話が鳴るたびに作業が止まります。予約をオンラインで受ける形にすると、ここが減ります。導線の作り方は店舗サイトの予約導線に、AIにどこまで任せられるかは予約の一次対応をAIにどこまで任せるかにまとめました。

打ち合わせや朝礼の記録も候補です。残す項目を絞る考え方は朝礼や打ち合わせをAIで議事録にする前ににあります。

ただし、どれを減らすかは自店の時間の使い方を数えてからです。 1週間、何にどれだけ時間を使ったかを書き出さずに決めると、いちばん重い仕事が残ります。費用の側から見る手順は個人店の集客予算はいくらが妥当かと同じで、相場を探すより自店の数字から始めます。

まとめ

  • 令和8年8月の有効求人倍率は職業計1.06倍。生活衛生サービスは3.13倍、接客・給仕2.31倍、飲食物調理2.21倍
  • 一般事務は0.29倍。同じ費用でも職種で結果が変わる。求人票の文面の問題ではない
  • 2024年4月から、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必要になった
  • 有期契約なら更新上限・無期転換申込機会・無期転換後の労働条件も明示する
  • 更新上限をあとから新設・短縮するなら、理由の事前説明が要る
  • 年10日以上付与される労働者には、年5日を店が時季指定して取得させる義務がある。管理監督者と有期雇用も対象
  • 年次有給休暇管理簿は労働者ごとに作成し3年間保存。就業規則にも記載し、変更したら届け出る
  • 採用の前に、法令の事務・自分で増やした仕事・客に渡せる仕事に分けて、3番目から減らす

求人を出すかどうかは、この2つを並べたうえで決めてください。

店舗の情報整備から見直したい方へ。無料のMEO診断では、Googleビジネスプロフィールの記載内容を確認してお返ししています。

参照した一次情報

本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。

あわせて読みたい