店舗×AI

予約の一次対応をAIにどこまで任せるか。線の引き方と、渡してはいけない情報

電話が取れない時間の問い合わせをAIに任せたい、という相談が増えています。任せられる範囲と、誤答が客商売として痛くなる領域を、公式情報をもとに切り分けました。

「営業中は電話に出られないし、閉店後の問い合わせは翌日になってしまう」

この穴をAIで埋めたい、というご相談が増えています。方向としては妥当です。ただ予約は、間違えると客商売として痛い領域なので、任せる範囲を先に決める必要があります。

以前店舗の業務をAIに任せるなら、最初の1つはどれかで、問い合わせへの自動返信は「誤答がそのまま顧客に届く」ため最初の1つには向かないと書きました。今回はその続きで、それでも任せるならどこまでか、という話です。

前提:Googleビジネスプロフィールのチャットは終了している

まず窓口の話から。かつてはプロフィール上でユーザーとチャットできましたが、2024年7月31日をもって、ビジネスプロフィールのチャット機能と通話履歴機能は利用できなくなりました。「よくある質問」チャットや見積もりリクエストも同様です。

代わりに案内されている連絡手段は次のとおりです。

手段 備考
テキストメッセージ / WhatsApp 対象アカウントで追加できる
「Googleで予約」 一部の地域で利用可能
電話 プロフィールの電話番号から

「プロフィールのチャットにAIを繋ぐ」という設計は、もう成立しません。自社サイトのフォームやチャット、あるいは予約システム側で考えることになります。

任せられるのは「答えが変わらない質問」

線引きはここです。同じ問いに、いつ誰が聞いても同じ答えを返せるものだけを任せてください。

任せやすい 任せにくい
営業時間、定休日、住所、駐車場の有無 「今週末の18時、空いていますか」
施術メニューの一般的な所要時間 「この症状だと何分コースですか」
支払い方法、キャンセル規定の条文 「今回は特別に無料にできますか」
予約ページへの案内 予約の確定そのもの

右側に共通するのは、在庫(枠)と例外の判断が必要なことです。ここを機械が答えると、店側が把握していない約束が発生します。「空いています」と返したあとに実は満席だった、という事故は、単なる誤りでは済みません。来店した方をその場で断ることになります。

左側は、裏を返せば自社サイトやプロフィールに書いてあるべき情報でもあります。AIに答えさせる前に、営業時間や支払い方法がどこかに明記されているかを確認してください。書いていないことは、人にもAIにも答えられません。

誤答は「起こり得るもの」として設計する

生成AIの出力は、確率的に組み立てられます。個人情報保護委員会の注意喚起には、利用者向けの留意点として次の記述があります。

生成 AI サービスでは、入力されたプロンプトに対する応答結果に不正確な内容が含まれることがあります

同じ箇所に、応答は確率的な相関関係に基づいて生成されるため、不正確な内容が含まれるリスクがあるとも書かれています。

つまり誤答は設定ミスではなく、仕組みとして起こり得ます。「精度を上げれば解決する」という前提で予約確定を任せないでください。Googleも生成AIコンテンツについて、正確性・品質・関連性を重視し、人による確認を求める趣旨の案内をしています。

現実的な設計は、AIに予約を取らせず、予約ページへ運ばせることです。空き枠の判断は予約システムに任せ、AIは「どこで予約できるか」を案内する役に留める。これなら誤答の被害は限定されます。

顧客の情報を渡さない

もう一点、法令側の線があります。個人情報保護委員会は事業者向けにこう示しています。

個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること

さらに、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は法違反となる可能性があるとされ、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求められています。

予約対応は、氏名・電話番号・来店履歴が飛び交う場面です。導入するなら、契約形態(学習に使われない設定か、法人向けプランか)を確認してから始めてください。

引き継ぎの条件を先に決める

最後に運用です。人に渡す条件を、導入前に決めておいてください。

  • 空き状況を聞かれたら、予約ページか電話へ案内する
  • 料金や規定の例外を求められたら、人に引き継ぐ
  • 同じ質問が2往復で解決しなければ、人に引き継ぐ
  • クレームや体調・症状の相談は、最初から人が出る

あわせて、営業時間外である旨と、いつ人が返信するかを明示してください。「明日10時以降に担当者よりご連絡します」と書いてあるだけで、待つ側の体験は変わります。問い合わせ導線そのものの点検はホームページから問い合わせが来ないときを参照してください。

まとめ

  • ビジネスプロフィールのチャットは2024年7月31日で終了。窓口は自社側で用意する
  • 任せるのは「いつ誰が聞いても同じ答え」になる質問だけ
  • 空き枠の判断と予約の確定は任せない。予約ページへ運ぶ役に留める
  • 誤答は仕組みとして起こり得る。精度で解決する前提を置かない
  • 顧客の個人情報をプロンプトに入れる前に、利用目的と学習利用の有無を確認する
  • 人へ引き継ぐ条件と、返信のタイミングを先に決めておく

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参照した一次情報

本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。

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