店舗経営

値上げの伝え方。告知文より先に、直す場所と表示のルールを決める

「値上げ前の今がお得」は、将来の販売価格を比較対照にした二重価格表示にあたります。税込価格の書き方、旧価格を併記できる条件、価格が載っている場所の洗い出しまで、国税庁と消費者庁の資料から整理しました。

値上げを決めたあと、最初に手をつけたくなるのは告知文です。お詫びの一文をどう書くか、理由をどこまで説明するか。

ただ、先に決めるべきなのは文章ではなく、価格が載っている場所の一覧と、表示のルールです。文章が良くても、直し漏れた場所があれば会計時に食い違いが出ますし、書き方によっては景品表示法の問題になります。

値上げそのものをするかどうかの判断は客単価を上げるとは値上げのことかに書きました。ここから先は、決めたあとの話です。

価格が載っている場所を、先に数える

洗い出さずに始めると、必ず残ります。店舗でよくある場所を挙げます。

  • 店頭・卓上のメニュー、券売機、POSの登録
  • 自社サイトのメニューページ、料金ページ
  • Googleビジネスプロフィールの商品・サービス・メニュー
  • 予約システムのコース設定
  • デリバリー・テイクアウト各社の管理画面
  • チラシ、ショップカード、看板
  • SNSの固定投稿、過去投稿の画像

意外と残るのが過去の口コミへの返信です。「◯◯円でご用意しております」と書いた返信は消えません。価格に触れた返信があるなら、把握しておいてください。

サイト側の直し漏れがどう効くかはホームページが更新されていない店は、何を失っているかにまとめています。

反映に時間がかかる場所がある

同時に直しても、同時には反映されません。

Googleビジネスプロフィールは、変更内容がGoogleマップやGoogle検索の表示に反映されるまでに24〜48時間程度かかることがあるとされています。商品・サービス・メニューの使い分けはGoogleビジネスプロフィールの商品・サービス・メニューの使い分けにありますが、改定当日に入力しても当日には出ません。

前倒しで入れておく、が答えになります。逆に言えば、プロフィール側だけ先に新価格が出てしまう期間もありえます。改定日を明記しておくと、その食い違いを説明できます。

税込価格で書く。「+税」だけは認められていない

国税庁のタックスアンサーには、こう書かれています。

総額表示義務とは、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額(地方消費税額を含む。)を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるものです。

対象は媒体を問いません。「店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など」どれでも同じです。一方で、価格を表示していない場合にまで税込価格の表示を義務付けるものではなく、口頭で伝える価格も対象外とされています。

認められる表示例として挙げられているのは次の形です(税率10%の場合)。

  • 11,000円
  • 11,000円(税込)
  • 11,000円(税抜価格10,000円)
  • 11,000円(うち消費税額等1,000円)
  • 10,000円(税込価格11,000円)

税込の数字がどこかに入っていることが条件です。本体価格だけ、あるいは「10,000円+税」だけ、という書き方は該当しません。値上げの告知で新価格を出すときも同じです。

「値上げ前の今がお得」は、二重価格表示になる

ここがいちばん見落とされます。消費者庁は、将来の販売価格を比較対照価格に使う表示についてこう書いています。

表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際の販売することのない価格であったり、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないなど)には、不当表示に該当するおそれがあります。

「来月から1,200円。今なら1,000円」という告知は、将来価格を比較対照にした二重価格表示です。これ自体が禁止なのではなく、告知どおりに値上げして、その価格で売り続けるなら問題にならないという構造です。

逆に言えば、告知だけして値上げを取りやめた、あるいは数日で元に戻した、という運用は危ない。駆け込みを狙って価格を予告するなら、予告した価格で実際に売る覚悟とセットにしてください。

旧価格を併記するときの条件

「旧1,000円 → 新1,200円」のように過去価格を併記する形もあります。こちらは過去の販売価格を比較対照にする話になります。

同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはありません。

「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあります。

値上げの告知で旧価格を書くこと自体は、実際にその価格で売っていたなら普通の情報提供です。注意が要るのは、一時的なキャンペーン価格を「通常価格」のように書く場合です。短期間だけ下げていた価格を旧価格として大きく見せると、ここに引っかかります。

2027年4月に税率が動く案が出ている(未成立)

もう一点、飲食料品を扱う店には先の話があります。

国税庁は令和8年9月15日に「消費税率引下げ特設サイト」を開設しています。令和8年9月15日の閣議決定を踏まえたもので、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率を1%に引き下げるという改正案の内容が説明されています。

ただし、サイトには明確な留保が付いています。

なお、内容については、今後、法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のものです。

まだ成立した制度ではありません。 そのうえで、価格表示に関わる部分だけ押さえておくと、総額表示義務の特例が用意される案になっています。Q&Aによれば、値札の貼り替えなどに「直ちに対応することが困難な事情」があり、誤認防止措置を講じている場合に限り、一定期間は変更前の税率による税込価格を表示できる、という内容です。「困難な事情」の例として「夜間の値札の貼り替え作業に対応できない」「カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されている」が挙げられています。

そして、ここでも同じ線が引かれています。

税抜価格(本体価格)のみを表示する方法や税抜価格に続けて「+税」とのみ表示をする方法など税込価格を表示しない方法は、引き続き認められません。

いま値札やメニューを作り直すなら、数年内にもう一度触る可能性があると見込んで、差し替えやすい作りにしておくほうが安全です。

まとめ

  • 告知文より先に、価格が載っている場所を数える。過去の口コミ返信も対象
  • Googleビジネスプロフィールは反映に24〜48時間かかることがある。前倒しで入れる
  • 税込価格を表示する。本体価格のみ、「+税」のみは認められない
  • 「値上げ前の今がお得」は将来価格との二重価格表示。告知どおりに値上げして売り続ける前提で使う
  • 旧価格の併記は、実際に相当期間その価格で売っていたなら問題ない。短期のキャンペーン価格を通常価格のように書かない
  • 飲食料品の税率引下げ案(令和9年4月〜)が公表されているが未成立。値札は差し替えやすく作る

文章は最後でかまいません。先に場所とルールを固めてください。

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参照した一次情報

本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。

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