朝礼や打ち合わせをAIで議事録にする前に。どこに何が残るかを先に決める
文字起こしは主催者のGoogleドライブに保存され、チャットは含まれません。要約は不正確なことも、生成されないこともあります。録音記録が個人情報に当たるかの線も含めて、公式ヘルプと個人情報保護委員会のFAQから整理しました。
朝礼で決めたことが翌週には誰も覚えていない。打ち合わせのあとに「そんな話だったか」が起きる。議事録を書く係を決めても続かない——この順番で、AIの文字起こしに手が伸びます。
つまずくのは精度ではありません。 どこに何が残り、誰が見られるのかを決めていないことで止まります。先にそこを押さえます。
AIに任せる最初の1つの選び方は店舗の業務をAIに任せるならにまとめました。
文字起こしに入るもの、入らないもの
オンラインの打ち合わせなら、会議ツールの機能で足ります。Google Meetのヘルプを例に取ります。
含まれる範囲が限定されています。
文字起こしには、会議で話された言葉のみが含まれます。
チャットは入りません。 URLやメモをチャットに貼って済ませる打ち合わせだと、肝心な部分が残らないことになります。ヘルプにはこう書かれています。
チャット メッセージの文字起こしを記録するには、ビデオ会議を録画します。
文字起こしと録画は別の機能で、残る範囲が違う、ということです。
参加者に伏せて使うことはできません。
会議の文字起こしがオンになっている場合、会議の参加者全員の画面の右上に文字起こしアイコン
全員の画面に出ます。黙って録る、という選択肢は最初からありません。 これは運用上むしろ助かる仕様です。
対応言語は英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・日本語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語の8言語です。
保存先は「主催者のドライブ」
ここがいちばん効きます。
会議の文字起こしは、会議の主催者の Google ドライブの「Google Meet」フォルダに保存されます。
会議ごとにサブフォルダが作られます。会議が終わると、
会議が終了すると、会議の文字起こしへのリンクが記載されたメールが、次の宛先に送信されます。
主催者、共同主催者、文字起こしをオンにしたユーザーに届きます。参加者全員には届きません。
実務上の意味は2つあります。
- 会議を立てた人の個人アカウントに記録が溜まる。 その人が辞めると、記録ごと見えなくなる可能性があります
- 参加していない人は、リンクをもらわないと存在に気づけない
店舗だと、店長が自分のアカウントで会議を立てるのが普通です。そのまま1年運用すると、店の記録が店長個人のドライブにだけある状態になります。共有ドライブや、店で管理しているアカウントを主催者にするかを、最初に決めてください。
自動メモ生成が出すもの
文字起こしをそのまま読むのは現実的ではありません。Google Meetには要約を作る「自動メモ生成」があります。
出てくるものはこう説明されています。
アクション アイテムなど、会議の最も重要なポイントのみの短い要約が表示されます。
詳細版では、要約・決定事項・アクションアイテムが並びます。保存先は文字起こしと同じ考え方です。
会議の終了後すぐに会議メモのドキュメントが生成され、会議の主催者の Google ドライブにある「Google Meet」フォルダに保存されます。
招待した相手に自動共有する設定もありますが、その場で立てた会議だと、
メモは主催者および「自動メモ生成」を開始したユーザーとのみ共有されます。
ここも参加者に自動では渡りません。
参加者への通知はあります。
会議の参加者全員にメモが作成されていることが通知され、参加者全員の画面に鉛筆アイコンが表示されます。
そして限界がはっきり書かれています。
- 要約は不完全・不正確なことがあり、生成されないこともある
- 想定しているのは15分から8時間の会議
- 複数の言語で行われる会議には対応していない
5分の朝礼は想定範囲の下限を下回ります。短い朝礼にこの機能を当てるのは、仕様の外ということです。
対面の朝礼は、別の経路になる
店舗の朝礼は対面です。会議ツールの機能は使えません。スマホで録音して、文字起こしのツールに渡す形になります。
ここで条件が変わります。会議ツールのように参加者の画面にアイコンが出ることがありません。 全員が知らないまま録られている状態になり得ます。そして録音データは、自分で保存場所を決めることになります。
録音記録は個人情報に当たるか
判断の仕方が個人情報保護委員会のFAQにあります。顧客との電話についての問いですが、考え方は確認できます。
通話内容から特定の個人を識別することが可能な場合には個人情報に該当します。個人情報に該当する場合、個人情報取扱事業者は、個人情報保護法上、利用目的を通知又は公表する義務を負いますが、録音していることについて伝える義務までは負いません。
利用目的の通知・公表は義務。録音していると伝えるのは義務ではない。 ここは意外に思われるところです。ただし「義務ではない」は「伝えないほうがよい」ではありません。朝礼の録音を黙って続ければ、法令の前に職場が成り立ちません。
識別できない場合についても別の問いがあります。
基本的には個人情報に該当しません。ただし、その他の情報と容易に照合でき、それによって特定の個人を識別することができれば、その情報とあわせて全体として個人情報に該当することはありますので、個別の事例ごとの判断が必要です。
店の朝礼は、話しているのが誰かが分かる状態で録ります。ほぼ照合できる側に入ります。
さらに踏み込んだ記述があります。
なお、録音した音声から特徴情報を抽出し、これを話者認識システム等本人を認証することを目的とした装置やソフトウェアにより、本人を認証することができるデータに変換した場合、当該データは個人識別符号に該当し、それ単体で個人情報に該当します。
話者を識別する機能を持つツールを使う場合は、ここに触れ得ます。使うサービスと契約の形をどう確認するかは顧客情報を生成AIに入れる前にと同じ手順です。
なお、上に引いたFAQは顧客との通話を前提にしたものです。対面の会議や従業員の録音にそのまま当てはまると書かれているわけではありません。 自店の運用を決めるときは、この線引きを踏まえて判断してください。
残すのは3項目でいい
最後に活かす側です。Googleが要約の中身として置いているのは、要約・決定事項・アクションアイテムの3つです。この並びはそのまま使えます。
朝礼の記録として残すのは次の3つで足ります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 決めたこと | 「やる」「やらない」のどちらかが分かる形で1行 |
| 担当 | 名前を1人だけ。「全員で」と書くと誰もやらない |
| 期限 | 日付。「なるべく早く」は期限ではない |
文字起こしを全文残しても読み返されません。 残すべきはこの3項目で、文字起こしはその元になる材料です。AIに作らせるのはこの3項目の下書きまでで、確定は人がやります。要約が不正確なことがあると公式に書かれている以上、そこは詰められません。
まとめ
- 文字起こしに入るのは話された言葉だけ。チャットは入らない
- 文字起こしがオンだと全員の画面にアイコンが出る。黙って録ることはできない
- 保存先は主催者のGoogleドライブ。参加者全員にはリンクが届かない
- 店長個人のアカウントで会議を立て続けると、記録が個人に溜まる
- 自動メモ生成は要約・決定事項・アクションアイテムを出す。15分〜8時間の会議向けで、複数言語には非対応
- 要約は不完全・不正確なことがあり、生成されないこともあると明記されている
- 対面の朝礼は録音からになる。参加者に知らせる仕組みが自動では働かない
- 録音記録は、特定の個人を識別できれば個人情報。利用目的の通知・公表は義務、録音の告知は義務ではない
- 残すのは決めたこと・担当・期限の3項目。確定は人がやる
最初の1回は、主催者を誰にするかを決めるところから始めてください。
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参照した一次情報
本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。