店舗の販促にAI生成画像を使う前に。著作権と、実物と違う写真の線引き
生成画像をチラシやSNSに使うときの論点を3つに分けて整理しました。文化庁の考え方、実物と違う写真が景品表示法で問題になり得る理由、そして使ってよい場面の線引きです。
「チラシの背景をAIで作りました」「料理写真がきれいに出なかったのでAIで整えました」
前者と後者では、話がまったく違います。店舗でAI生成画像を使うときの論点は3つあり、それぞれ別の法律や規約が関わります。
| 論点 | 関わるもの |
|---|---|
| 権利 | 著作権法(類似性・依拠性) |
| 表示 | 景品表示法(優良誤認表示) |
| 掲載先 | 各サービスのポリシー |
以下は公開されている一次情報の紹介です。個別の判断は専門家に確認してください。
権利:AIで作っても、通常の創作と同じ枠組みで見られる
文化庁の文化審議会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)には、生成・利用段階についてこう書かれています。
従前の人間が AI を使わずに行う創作活動の際の著作権侵害の要件と同様に考える必要がある
そして侵害の判断はこうです。
生成 AI による生成物についても、その生成・利用段階において、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、当該既存の著作物の著作権者は、生成物の生成行為や利用行為が、既存の著作物の著作権侵害に当たるとして、当該行為の差止請求や損害賠償請求を請求し得る
故意による著作権侵害には刑事罰の適用があり得るとも記されています。
もう一点、店舗の実務で効く指摘があります。
AI 利用者が知り得なかった著作物を含む大量のデータを用いている生成 AI を利用する場合もあり、このような利用は、AI 利用者が認識し得ない著作物に基づいたものを生成する可能性もある
つまり「自分は何も参照していない」は、安全である根拠になりません。類似性は、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるかで判断されるとされています。有名なキャラクターや特定の作風を指示して出した画像は、避けたほうが無難です。
なおこの文書には、生成AIと著作権の関係について判例および裁判例の蓄積がないという現状認識も示されています。確立した線引きがまだない領域だ、という前提で扱ってください。
表示:実物と違う画像は、別の問題になり得る
こちらのほうが、飲食店や美容室では現実的なリスクです。
景品表示法第5条第1号の優良誤認表示は、商品・サービスについて実際のものよりも著しく優良であると示すもので、不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を指します。違反と認められた場合、消費者庁長官は措置命令などの措置を行うとされています。
具体例として挙げられているのは、走行距離を偽った中古車、ブランド牛でない肉をブランド牛と示した表示などです。「実際と違うものを、良く見せる」という構造は同じです。
店舗に置き換えると、次のような使い方が該当し得ます。
- 提供していない盛り付け・量の料理画像を、メニュー写真として使う
- 施術の仕上がりを、実際には出ない状態に加工・生成する
- 実在しない内装や設備を背景に合成する
「イメージです」と小さく書けば済む話ではありません。判断の軸は、誇張の程度が社会一般に許容される範囲を超えているかどうかです。
掲載先:プラットフォームのポリシーも別にある
Googleビジネスプロフィールに載せる場合、送信・公開した写真と動画には禁止および制限されているコンテンツに関するポリシーが適用されるとされています。プロフィールの写真は実際の店舗を示すものとして見られるので、生成画像を混ぜる場所ではありません。
必要な枚数と要件はGoogleビジネスプロフィールの写真は何枚必要かにまとめています。ここは実際に撮ってください。
使ってよい場面の線引き
3つの論点を踏まえると、こう整理できます。
| 用途 | 判断 |
|---|---|
| チラシの装飾・背景、抽象的なイラスト | 使いやすい |
| SNS投稿の図版、季節の挨拶画像 | 使いやすい |
| 提供している料理・商品の写真 | 実物を撮る |
| 施術の前後、仕上がりの例 | 実物を撮る |
| 店内・外観 | 実物を撮る |
| 特定の作風やキャラクターを指示した画像 | 避ける |
線引きはシンプルです。購入の判断材料になる部分は撮る。装飾は生成してよい。
運用で決めておくこと
最後に3つ。
- 使うツールの利用規約で、商用利用の可否と生成物の扱いを確認する。サービスごとに条件が違います
- 生成画像と実写を、店内で見分けられるようにしておく。ファイル名やフォルダを分けるだけで十分です
- 公開前に人が見る。AIに任せる範囲の決め方は店舗の業務をAIに任せるなら、最初の1つはどれかに書いています
まとめ
- 論点は権利・表示・掲載先の3つ。それぞれ別のルールが関わる
- AIで作っても、著作権侵害の要件は通常の創作と同様に考えるとされている
- 類似性と依拠性が認められれば差止請求や損害賠償請求の対象になり得る。故意には刑事罰もあり得る
- 「自分は参照していない」は根拠にならない。判例の蓄積がない領域でもある
- 実物と違う画像は優良誤認表示の問題になり得る。措置命令の対象
- 購入の判断材料になる画像は撮る。装飾は生成してよい
- ビジネスプロフィールの写真にはポリシーが適用される。実際に撮ったものを使う
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参照した一次情報
本記事は一般的な傾向と公開情報にもとづく解説です。制度・仕様は変更されることがあるため、実際の手続きや設定の際は必ず一次情報をご確認ください。